C-Macksの自論展開

日々の物事に対し、情報を収集し自論を述べていくものです。賛同意見・反対意見は歓迎しますが、暴言・脅迫・罵詈雑言はお断りです。

宝塚歌劇団の光と影

9月に宝塚歌劇団の劇団員が、精神的に追い込まれお亡くなりになる痛ましい事件が起こりました。劇団側、遺族側がそれぞれ会見を行い、それぞれの主張を行いましたが、様々な点で食い違いも見受けられています。真実は亡くなった方にしかわからないので、私はあえて触れませんが、公表されている情報から宝塚歌劇団の光と影の姿が垣間見えたので、今回はその点を私の目線で考察しようと思います。

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宝塚歌劇団、そこは俳優や役者を目指す女性には憧れの場所であり、創設者である小林一三氏のお言葉「清く、正しく、美しく」を胸に日々厳しい鍛錬を行い、素晴らしい演劇を我々に届けている素晴らしい劇団である。直接は鑑賞したことはないが、多くのファンがいることと演劇に対して悪い噂を聞かない点でも、作品が素晴らしいことは言うまでもない。

さて、その宝塚歌劇団において劇団員が精神的に追い込まれ自殺をするという事件が起きてしまった。原因は上級生からのパワハラ(劇団側は過度な指導と表現)と長時間労働である。ここで劇団側と遺族側の主張の食い違いとして、社会的に許容されるが行き過ぎた指導なのか、許容範囲を超えるパワハラなのかということだ。ただ指導とパワハラでは大きな違いがある。指導とは、相手の成長を願い、相手に理解されるような説明をしていることである。相手の理解が追いつかない時には、噛み砕いた説明が必要となる場合もあり、そこに怒りや妬みなどの負の感情を入れたり、権力の行使をしてはならない。一方パワハラは、力や権力を振りかざして相手を自分の言いなりにさせたり、嫌がらせをする行為である。多くは怒りや妬みなどの負の感情が入っている。「あなたのことを思って」などと言う者がいるが、これはパワハラを行う人の常套句である。

宝塚歌劇団は規律を非常に重んじることでも有名である。ただ規律を重んじるが故に、違反者に対する罰が厳しすぎるとの指摘が出ている。これでは自由度が極めて少なく、ストレスや鬱憤が貯まるだけであろう。また上下関係が厳しいことでも有名である。つまり、上級生の鬱憤ばらしの矛先が、弱者すなわち下級生に向けられたら、それは指導の名を借りたいじめや嫌がらせとなるのだ。今回報道されている内容においては、明らかに指導とは程遠い発言が多くあり、日頃からパワハラが横行していた可能性が極めて高い。規律を守ることや、「清く、正しく、美しく」の信念を貫くことは大変良いことではあるが、そのことがストレスとなって人に当たり散らすようでは、言語道断である。これらのことは創設者の望んでいたことであろうか…

もう一つ問題となっているものが長時間労働である。過労死ラインと呼ばれる単月100時間あるいは複数月平均80時間を超える時間外労働が存在したことを、劇団側、遺族側の双方が認めているが、その長さには大きな隔たりがある。長すぎる時間外労働は当然大問題であり、うつ病などの精神疾患の要因である。しかし私は、劇団と故人との労働契約の関係性に着目した。通常であれば事業主と労働者の関係で雇用契約を結び働くのだが、この事件で亡くなった方は、企業と個人事業主フリーランス)の関係で業務委託契約を結び働いていたのだ。これの何が問題なのか。詳細は省略するが、業務委託契約であれば、劇団は社会保険料の負担を免れることができ、時間外労働になったとしても割増賃金を払う必要がなく、安全配慮義務もする必要がない。ただこれは「実態がフリーランス」であることが前提である。今回亡くなった方は、「契約はフリーランスだけど、実態は労働者」という「偽装フリーランス」であった。実態が労働者であれば、如何なる契約であれ労働各法において守られる労働者として扱わなければならない。また、宝塚歌劇団の労働契約の形態もひどいものである。入団5年までは1年更新の有期雇用契約、それ以降は前述した業務委託契約である。有期雇用契約を1回以上更新、累計5年以上継続して勤務、の2つの条件をクリアした労働者が無期雇用契約を申請できる制度が2013年から施行されているが、劇団との契約はこの制度を悪用し、労働者の権利を蔑ろにした例である。まさにブラック企業の所業である。

今回の劇団員の自殺の背景にある宝塚歌劇団の影の部分について自論を述べた。元劇団員の方の体験談や公開されている情報を総括すると、現役の軍国主義だなと私は感じた。指導と称するのであれば、足りない部分を補うことこそ真の指導であり、怒りや妬みといった負の感情が入った時点で、もはや指導ではないことを自覚してもらいたい。ストレスが溜まるのなら、1日でも規律から解放される日があってもいいと私は思う。また、ストレスが溜まることを助長した劇団の労働環境や制度にも原因があることを劇団運営者には理解をしていただきたい。「光あるところには、必ず影ができる」と昔の人は言っていたが、自分はこうも思う。「当たる光が強ければ強いほど、できる影は暗さを増し濃厚なものになる」