C-Macksの自論展開

日々の物事に対し、情報を収集し自論を述べていくものです。賛同意見・反対意見は歓迎しますが、暴言・脅迫・罵詈雑言はお断りです。

紅麹のサプリメントによる健康被害事件の考察

小林製薬から発売された「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人による健康被害が報告されてから数日がたち、関連すると思われる死亡例も出てきました。健康食品が健康被害をもたらすことは、決してあってはなりません。徹底的に調査を行い、原因の究明と対応策を検討してもらいたいものです。

大学時代に有機化学を専攻していたこともあり、この事件にはかなりの関心があります。私が持つ知識と公にされている情報から、独自の見解を述べようと思います。

なお、専門用語を使うため理解が困難な場合もあると思います。それでも興味を持たれた方は続きをどうぞ。

まず「紅麹」が何者か押さえる必要がある。正式には「ベニコウジカビ」と呼ばれ、カビの一種である。つまり生き物である。そして、紅麹にもいくつか種類が存在しており、毒を出さない種もあれば、指摘されている「シトリニン」という腎臓に作用する毒を生成する種、未解明な種もある。小林製薬で製造されている種は、シトリニンを出さない種を使っているとのことだ。

ここで1つ目の仮説を立てる。それは、小林製薬が採用した種がシトリニン以外の別の毒を生成する可能性だ。これは何人かの専門家も指摘しており、未知の物質が検出されたことからも推察できる。一般には恐怖でしかないが、研究者には新しい発見となり、研究の対象となるのだ。

この未知の物質は、 3月29日の小林製薬の会見で「プベルル酸」であることがHPLCによる解析により判明した。これは青カビが作る物質であり、非常に毒性が強いことが過去の文献から明らかとなっているが、解明されていない点が多い物質である。腎臓に対する毒性を有しているかすら定かではない。ベニコウジカビがプベルル酸を生成する可能性は低いと言われているが、その可能性を容易く捨てることは得策ではない。

紅麹も生き物であるため、様々な可能性を秘めている。2つ目の仮説として、温度、湿度、その他諸々の条件において、特定の条件が揃うことで毒を生成する可能性だ。カビの仲間には条件次第で毒性を示したり、毒を生成したりすることは多々ある。小林製薬で製造されている種はシトリニンを生成しないと言われているが、条件がそろえばシトリニンやその誘導体、今回判明したプベルル酸を生成する可能性があるということだ。さらに3つ目の仮説として、ベニコウジカビが毒を生成する種に変異する可能性だ。カビ類は特定の条件が揃うことで変異を引き起こすことが知られている。今回の事件は予期していなかったと思われるため、この2つの仮説も検証、研究をする価値はある。

他方で、紅麹を培養する際に青カビ等の別のカビ類が混入した可能性が指摘されている。工場の老朽化や人為的なミス等による混入の可能性は十分に考えられるが、衛生状態に厳格さが求められる製薬会社、麹を取り扱うものとしてはあまりにもお粗末である。また、大阪工場を閉鎖する直前に製造されたロットから、健康被害の報告やプベルル酸の検出が確認されている点に着目すると、既に紅麹が何らかの汚染を受けていることを知り、その隠匿のために工場を閉鎖、移転をしたという見方ができる。仮にこれが真実ならば、会社の存続に関わる重大な事案である。そうでないことを願いたい。

東京工科大学の今井名誉教授によると、コレステロール値を下げる効果があるとされている「モナコリンK(正式名:ロバスタチン)」を過剰摂取すると腎障害を引き起こすことがあり、これが原因の1つである可能性を示唆した。その指摘を受けて調べたところ、腎障害や肝障害等の重篤な副作用が、過剰摂取によって引き起こされることが既に報告されている。また、めまいや倦怠感、吐き気、便秘などの軽度な症状も出るとされ、健康被害を証言する方の症状と一致するものが多い。メリットにばかり注視し、デメリットの方を軽視した結果であるといっても過言ではないだろう。他方で、サプリメントという手軽に扱える形状になったが故に、表れた症状であるとも考えられる。用法・用量が正しいのか、消費者が利用方法を守っているか、その辺りも含めて検討する必要があると思われる。

紅麹のサプリメントによる健康被害の事件について考察を行った。当初は「紅麹コレステヘルプ」を服用した方に被害が集中していたため、ベニコウジカビの変異や未知の毒を出すことを前提にして、含まれる成分との複雑な反応を考えていた。特にシトリニンは構造上、金属イオンがあれば錯形成が可能であるため、あらゆる反応を考察していた。しかし、次々と明らかとなる情報から当初の考察は可能性が低いと判断した。投稿時点での有力な可能性は、紅麹の過剰摂取によるものであると考えられる。また、薬と同様、サプリメント類においても過剰になれば毒になることが証明された。麹類を含むカビ類の世界は、未だに解明されていない点が多く、研究が盛んな分野である。紅麹類についても未解明な点があることから、これを契機に研究が盛んになることが期待される。

今回、紅麹のサプリメントによる被害に遭われた方々に、心よりお見舞いを申し上げる。今回の一件が事件のひとつとして片付けられるのではなく、今後同種あるいは他のサプリメントにおける被害を出さないための教訓となるよう、原因究明および対処法の策定に尽力していただきたい。機能性表示食品は、企業の責任のもとで効能を表示し、販売するものである。それを決して忘れてはならない。